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ここはPCゲーム『ザ・シムズ2』の 物語風プレイ日記を公開しているサイトです
05 / 03 Fri 16:21 ×
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02 / 07 Sun 00:01 #御風 ×

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「…語り継がれなかった物語を、人々はいつしか遠い記憶として、ゆっくりと忘れていきました。やがてその王城も、近隣との大きな戦に巻き込まれ、攻め滅ぼされたと伝えられています。
そうして時の車輪はすべてをくだきながら、ゆっくりと、ゆっくりと、まわり続けていくのです。これまでも、そしてこれからも…」

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「はい。西の国のお話は、これでおしまい」
「えー」

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「今夜のお話は、本当にそれでおしまいなの。母さん?」
「そうよ、サイード」
「やだなあ、そんな終わり方!」
 
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「とても悲しいおはなしね。騎士さまも、女の人も、どちらも死んでしまうなんて」

「まあ、ライラ。そんな泣きそうな顔をしないで、これはただの物語なのよ」

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「何とかならなかったのかなあ? あっそうだ、魔法のランプだよ!
それさえあれば、魔人に頼んで騎士を生き返らせて、ふたりでこの国まで逃げてこられたんじゃない?」

「ばっかね、サイード。魔法のランプなんて、西の国にあるわけないでしょ、ねえ母さん。西の国にはそんなもの、ないわよね」

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「ふふ…そうねえ」

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「西の国に、魔法のランプはなかったけれど…」



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「しかし、奇跡は起きたんじゃないかな、アナラ」

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「イクバール…」

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「どういうこと、イクバール父さん」

「父さんも、このお話を知ってるの?」

「ああ、そうだよ」

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「…その、西の国の心優しい神父様はね、倒れている騎士たちのもとへ戻った時、フォルチュナアトが虫の息ではあるけれど、まだ生きていることに気がついたんだ。
大きな傷を負い、血にまみれた身体は死んだように冷たかったけれど、確かに彼はまだ生きていた。そしてそればかりではなかった。

おそらく神のご加護だろう…塔から身を投げた女もまた、死んではいなかったんだ」

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「神父は二人をひそかに匿い、王城の人々の目を盗んで手厚く看護した。そして騎士と異国の女の人の傷が癒えると、彼らを秘密裏に遠い異国の地へと逃したんだ。
最後に、こう言ってね」

――――――争いの末に人を殺した者をかくまい、逃そうとする私は罪人と糾弾されても仕方のないことでしょう。ですが、フォルチュナアト殿。

九十九匹の羊のために、一匹の子羊を見捨てようとする行為は、殺人者をかくまう以上の罪であると言えないでしょうか?

さようなら、騎士殿。もうお会いすることも、ありますまい。
はるか遠い地でも、神があなたがたをお守りくださいますように。




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「ねえ、サイード。あのお話って、もしかして父さんと母さんのことなんじゃないかしら…」

「えー?でも、あれは昔々のお話だって、母さん言ってたじゃないか」

「そりゃそうだけど。でも父さんは、むかし西の国の人だったのよ。あたし、前にそう聞いた事があるもの」

「…」

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「アナラ…いま君は幸せかい?」

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「ええ、イクバール」

「…私もだ」

―――かつて、すべてを捨て

そしてすべてを得た。

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フォルチュナアトと呼ばれた騎士と、グレナディンと呼ばれた異国の女が、その後どうなったのか。それは誰も知りません。

これは遠い、遠い昔。
西と東が出逢い、そしてひとつになった、小さな奇跡の物語。


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