最近は、俺様にとって悪い事ばかり続く。
…
つい先日、わがバークレー邸は大幅な改装修理を行った。
母が「最近、流行の温室が欲しいわ」と言い出したのが、そもそものきっか
けだ。無論、俺が母に異を唱えるはずもない。
これが、新しいバークレー邸だ。基礎部分は利用しつつ、1階から三階に至
るまで、かなりの部分に手を入れたため、以前とは殆ど別の屋敷になった。
…まあ、内装についての紹介は省略する。
さて、屋敷の改装がほぼ済んだ後の、ある晩のことだ。
俺は母と、居間で会話をしていた。
「そろそろ、お父様の命日だね」
「そうね…ねえキッド、あなたにお話があるの」
「なに、母様?これを機に、屋敷内にお父様の銅像でもたてる?」
「違うのよ、ねえ聞いて」
「お父様が亡くなって、もう随分になるわね」
「え、そ、そうかな」
「それでね、母様…」
「そろそろ、再婚しようと思うの☆」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!」
「だ・・・・・・・だれと?」
「いやね、決まってるじゃないの。ガイとよ…キッド、鼻が出てるわよ」
俺はショックのあまり、鼻が垂れたことにも気づかずにいた。
「賛成してくれるわよね?」
無邪気に笑う、母…
「・・・いや・・・・お、俺は・・・賛成っていうか・・・・むしろ、いやつまり・・・」
カタカタカタ、と膝が震えるのを必死にこらえる。
ついに。
ついに、来てしまった。
本当はずっと恐れていたんだ、この瞬間を・・・・・まさか母様が、ガイと再婚など
するはずがないと信じていた、いや信じ込もうとしていた。
しかし、もう…
「あ、当たり前じゃないか。当然、賛成だよ!母様・・・幸せになって」
「ありがとう、キッド。嬉しいわ」
満足げに自室へと戻る母を、階下から見送りながら、俺は無言だった。
横に立つデヴィッドが
「大丈夫か、キッド?顔色が悪いぞ」
と、気遣うような言葉をかけてきたのも、ほとんど耳に入らなかった。
「もう、おしまいだ・・・・」
「違うよ、キッド。これから始まるんだよ、色々と」
「・・・」
デヴィッドなどに、俺の気持は分らない。
母様は俺のすべてだったのに。
…
悪いことは続くもので、学校では相変わらず、エリザベスが俺を悩ませる。
「キッドさまあ~どうしたんですか、今日なんだかちょっぴりアンニュイv」
「・・・」
頼むから、傷心の今くらい、俺を放っておいてくれ。
「元気ないキッドさま、リズがなぐさめてあげる!」
がし
「リズの思い、受け止めてえ☆」
え?
よ、よせ
ヤーメーロー!!!!!!!!
どーんッ☆
一瞬、目の前に広い川が見えた気がした。
岸向こうで亡き父が手を振っている。そして、まだ来てはいけないと、俺に…
もう、限界☆(色んな意味で)
俺は、エリザベス・ホッジスを床に放り投げた。
(というより、重力に耐え切れずに、エリザベスが勝手に地面に落ちた)
しかし、エリザベスはその巨体とは裏腹に、俊敏な動きですぐに起き上がった。
その恐るべき回復力…なんてタフな生き物なんだ。
「キッド様、ひどおい!女の子を床に落とすなんて!」
最近の鬱屈もあいまって、俺の中で、何かがぷちんと切れた。
「いいか、もうウンザリなんだよ!」
「お前みたいな、ぶくぶく太ったブスに付きまとわれるのは
迷惑なんだ!少しは鏡を見ろ、この豚女!!!」
「・・・・!!」
「金輪際、俺様に近寄るな!!」
教室は、一瞬しんと静まり返った。
「リ…」
「リズのどこが、ブスなのーーーー!!!!」
「・・・・・」
「リズはちょっと巨乳なだけだもん!キッドさま、いくら機嫌が悪いからって、
リズにやつあたりするなんてひどい!」
「・・・・・・う、うう」
「もう、キッドさまなんて知らない!今日は一日、口きいてあげない!」
なんだ、この暖簾に腕押し感。
そして漂う、敗北感。
…
…
誰か、俺に救いを。
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