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ここはPCゲーム『ザ・シムズ2』の 物語風プレイ日記を公開しているサイトです
05 / 19 Sun 10:13 ×
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02 / 17 Sat 22:00 #御風 ×
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今日も、平凡な一日が過ぎていく。
学校の食堂に行くと、アイザックがランチを取っていた。

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「いい食べっぷりだなー」
がふがふ

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食べ残しの皿を避けて、別のテーブルに座ると、アイザックが隣りから移って
きた。
「こないだ、ごめんなー」
「え?ああ…こっちこそ、忙しい時に悪かったよ」
ウェイターが料理をひっくり返すなんて、ざらにある事故だ。あそこの店長は
まるで見せしめにでもするかのように、客の前でアイザックを怒っていたけど、
原因となった僕としては、却って申し訳ないような気持になっただけだ。
アイザックは、よくああいう職場で頑張ってるよな…。
「あそこの店長、怖いな」
「従業員を怒鳴るのが趣味、みたいなヤツなんだよ」

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「ま、いいんだけどさ。あそこ、もう辞めようと思ってるから」
「え?」

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「それって…まさか僕のせいでクビとか?」
「ははは、ちがうって」
アイザックは、笑いながら言った。

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「単に俺が、あの店に見切りつけたってだけ。レオンも見ただろ、従業員
への扱いひどいんだよ」
「そうだな」
僕は同意した。
ちょっと立ち寄っただけでも、アイザックの目が回るような忙しさは見て取れ
た。客を案内するバーナードも、それなりに忙しそうではあったけれど、テー
ブルの片付けや注文を、全てバイト一人にこなさせるのは、酷なんじゃない
かと思った。

「あそこ、平日の昼はどうしてるんだ?」
「店長の奥さんが働いてる。でもランチが終わると、俺と交代して帰るんだ」
「ふうん…」
一日、働かないのか。
「ああいう小さな店は、夫婦共働きってイメージがあるけどな」
「夫婦仲、良くないんだよ。息子が一人いるらしいけど、親子仲も悪いらしい。
って、コックのサニーが言ってた」
なるほど。
バーナードのかりかりした態度には、その辺の家庭の事情も背景にあるのか
もしれないな。きっと、あんまり満たされない人生なんだろう。

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「ま、一番の原因は、給料払ってくれないからなんだけどな」
「げ、うそ」
「まじで。今月の分、まだもらってない」
それじゃ、待遇ひどいどころじゃない。雇用関係が破綻してるじゃないか。
そんな店、辞めて当然だ。

その後、僕は昨日の客のことを話題にした。

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「そーいや昨日、新聞記者がうちに訪ねてきてさ」
「記者あ?うっそ、レオン、お前いつからそんな有名人に…」
「違うって。なんか、放火犯の事件について、取材してるんだってさ。ほら、
最初の事件が起きたのって、うちの近所だろ」
「あーそうだっけ」
「そうなんだよ。ロビンスって言う、サラリーマンの家」
近所とは言っても、付き合いはないんだけどね。
正直、僕はロビンス家の人たちのこと、あんまり好きじゃない。

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“放火犯について、どう思う?”

そう言えば、あの記者の女性に、そんな質問をされたっけ。
…上手く、答えられなかったな。
僕はどっちかって言うと口下手で、とっさに気の利いた事を言うことができな
い。放火犯についてだって、
「許せないと思います。一刻も早くつかまってほしいです」
とか
「きっと何か、鬱屈した思いを抱えている人間の犯行だと思います」
だとかさ。
簡潔ながらきっぱりとした口調で、カッコ良くインタビューに答えたかったよ。
けど、そういう言葉は大抵、インタビュアーが去ってから思いつくんだよな。

ただ事件の報道以来、放火犯の動機について、僕がぼんやりと思いをめぐ
らせていることは事実だった。
ひょっとすると、僕は犯人にある種のシンパシーを、感じているのかもしれない。
例えば、レナードのやつに、自分自身や家族を貶められたり。
母さんの秘密主義にいらいらしたり。

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…。
そんな時、行き場のない怒りが胸の中をうずまいて、どうしようもなくなる。
みんな消えてしまえ、と八つ当たりめいた気持を抱くこともある。
消えてしまえ、という思いと、燃えてしまえという思いは、案外とても立ち位
置が近いんじゃないだろうか。

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「…どうしたんだ、レオン?」
「え?」
ちょっと、ぼんやりしていたらしい。

「男二人で昼飯か、さみしいな、お前ら」

背後から、嫌味な声が聞こえた。

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「…」
また、こいつか。

「お前と違って、友達がいるからさ、ブラック」
「言うじゃねえか」
「僕に話しかけるなよ」
「お前こそ、俺の視界に入るな。見てるとイライラするんだよ」
それは、こっちの台詞だ!
腹の中で呟く。
レナードの一言一言に、怒りのメーターが、ぐんぐんと上がるのを感じる。
こめかみが熱い。

いつも、こうだ。
レナード・ブラックは、多分僕をわざと怒らせたがってるんだ。いつも余裕しゃ
くしゃくな態度で僕を上から見下ろして、それだけじゃ飽き足らず、隙あらば
より屈辱的な位置に置こうとする。
僕が、こいつに何をしたって言うんだ。

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「んだよ、何か言いたいことがあるなら、言えよ、オラ」

ドンッ

立ち上がりかけたところを引きずられ、胸を強い力で突き飛ばされた。
思わず、咳き込む。

「いい加減にしろよ、お前ら」

がたんっと、音をたててアイザックが立ち上がった。

「レナード、お前、何でそうレオンを挑発すんだよ?いつも仕掛けるのは、お
前の方じゃないか、何がそう気に食わないんだよ」

アイザックが、僕の気持を代弁してくれた。
出来れば自分で言いたかったけど、怒りと生来の口下手で、僕はレナード
にケンカをふっかけられると、いつも以上に言葉が出てこなくなる。

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「うるせーな、お前は関係ないだろ、引っ込んでろウェルズ」
レナードは、鬱陶しそうにアイザックを睨む。
「何が気に食わないって?こいつの全部だよ、やる事なすことイラついて
仕方ないんだよ、声も、甘ちゃんな顔つきも、全部だ!」
「ふざけるな!僕だって、お前なんか大嫌いだ」

やっと、大きな声が出た。
ああ、くそ。このままいくと、確実にケンカになるな…
ケンカは嫌いだけど、しょうがない。男にはやらなきゃいけない時もある。

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僕はみがまえた。


しかし、その時。

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「お前ら、何してる!」

校長だった。
いつの間にか、食堂に来ていたのだ。ちっとも気がつかなかった。
まずい展開だった。
最近、生徒間のケンカ沙汰に対して、教師達はひどく敏感になっている。
中でもバービーとキッド、それに僕とレナードは、度々小競り合いを起こす
存在として目をつけられていた。

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「ブラック、ブロッサム!学校は何をするところだ?互いに暴力を振るう場所
か?答えてみろ、ブラック!」
「うるせーな、しゃしゃり出て来んじゃねーよ!」
相当、頭に血が上っているのか、校長を前にしてもレナードの攻撃性は全く
衰えない。
「親呼ぶか?上等だ、親だろうが神様だろうが、呼んで来いよ。そんな事で
人を止められると思うんならな!」

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親、と聞いて胸がどきっとした。
夜、僕達に気づかれぬよう、一人で涙を流していた母さんの顔が不意に
脳裏をよぎる。

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「教師に向かってそんな口の聞きかたをして…」
ラムゼイ校長の顔色は、赤を通り越して紫色に近くなった。
が、一呼吸置いて、何とか理性を保ったようだ。
「いいだろう、お前は保護者呼び出しだ。それから停学を覚悟しておくように」
「勝手にしろ」

…レナードには、怖いものがないんだろうか。
少なくとも、教師や親のことは恐れていないようだ。僕は違う。

「先生、これには理由があって…」
僕が言いかけると、ラムゼイ校長にすごい勢いでさえぎられた。
「ああ、聞かん、聞かん!!ケンカに双方の言い分なんか聞いたところで、
無意味だ!」
…正論かもしれないが。

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「もうすぐ卒業だろう、こんな大事な時期に、揉め事を起こしてどうする!保
護者の間でも、暴力事件が頻発していると、大いに噂になっている。お前
たち卒業したくないのか!?」

「…」

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「お前達、高校生にもなって、分らんのか?お前たちの引き起こす問題は、
たとえ発端がプライベートな事であっても、周囲に影響を及ぼすんだ。BR
ハイスクールの評判が、お前達のせいで下がる。お前達は学校に、ひい
ては他の学生迷惑をかけているんだ!なぜ、それに気がつかない!?」

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結局、校長の言いたい事は、学校の評判を落とすなってことかよ。
こっちの言い分なんて、聞こうともしない。
僕がレナードに、どれだけ腹の立つことをされ、ヤツの攻撃に学校生活を乱さ
れているか。どれだけ迷惑してるか。
そんな事情を、推し量りもしない。

世の中、なにか間違ってる。
僕は震えるこぶしを握り締めながら、唇をかみしめた。

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