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ここはPCゲーム『ザ・シムズ2』の 物語風プレイ日記を公開しているサイトです
05 / 19 Sun 09:01 ×
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02 / 18 Sun 04:35 #御風 ×
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今日も、僕が署へと帰還したのは、とっぷりと日が暮れてからだった。
連続放火魔は・・・・・・・・未だ、上がっていない。
思わずもらした溜め息に、疲労がにじんだ。

毎日、毎日、足を棒のようにして歩き回っても、煩雑な情報に振り回される
ばっかりで、ちっとも結果は得られない。
逆に、フロータウン一帯にはびこる、犯罪組織まで放火犯探しを始めたという
ありがたくない情報も入ってきていた。
警察の努力にも関わらず、街は不穏になる一方だ。

もし、犯罪組織が警察より先に犯人を捕まえてしまったら…。
時折、そんな悪夢のような不安が胸をよぎる。
まさかとは思うけど、可能性は皆無じゃない。もしそうなれば、警察の威信は
丸つぶれ、おそらく犯人の命は奪われ、事件の真相は闇に葬られるだろう。

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一課に戻ると、兄貴はノートパソコンのキーをせわしなげにカチャカチャと叩
いていた。報告書でも作成しているんだろうか。

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「兄貴…じゃなかった、ハート警部、遅いですね」
「ああ、どうだった聞き込みは」
「収穫なしです」
「そうか」

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「一体、何の報告書を…」
言いかけて、口が止まった。
パソコンの画面に映っていたのは、見慣れたテキストエディタのウィンドウ
ではなく、明らかにインターネットの掲示板だったからだ。
兄貴はさっきから、熱心にそこへ書き込んでいたのだ。

「勤務時間中に、何してるんだよ、兄貴」
思わず、刑事の仮面がはがれてしまった。
「んー?」

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僕は、呆れて言葉もなかった。
次いで、怒りが湧いてきた。

「僕や他の刑事達が、毎日毎日、靴の底すり減らしながら現場を回ってるっ
て、知ってるだろ?」
「もちろん」
兄貴は涼しい顔で答える。
パソコンの画面を隠すような様子もない。
「仕事はきついだろうが、今は大事な時期だ。もう少し辛抱してくれよ」
「そんな事言ってるんじゃない」
いらいらするあまり、大声を出してしまった。
「だから、そんな大事な時期にパソコンで遊ぶひまがあるんなら、兄貴も外回
りしろって言ってるんだよ!」
「おい、マイケル。なに、怒ってるんだよ」

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「腹減ってるのか?夕飯がまだなら、今日うちで一緒に食うか」
「…」
兄貴は、いつもこうだ。
のらりくらりとして、僕の怒りの矛先をかわしてしまう。

「…現場を指揮する兄貴がそんなだから…放火犯も捕まらないんだっ」

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足音がした。

「ハート、どうかしたか?」
ダンカーだった。
僕は兄貴とダンカーの顔を交互に眺めた後、無言のまま、その場から足早
に立ち去った。



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…。
八つ当たりを、してしまった。
兄貴がパソコンで何をしていたかは知らないが、多分、遊んでいたわけじゃ
ないんだろう。
ただ、結果を出せない焦りと、現況への不安で、どうしようもなくなっていた。

そもそも、僕は兄貴の能力を未だにはかりきれていない。
本当に有能なのか、彼に従っていっていいのか?
家族として愛している一方で、組織の一員としての兄貴を、僕はまだ信用
できずにいる…。

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「兄貴を、信用してやれよ、ハート」
僕の胸中を見抜いたかのように、背後で声がした。
ダンカーだ。

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「さっきは、失礼しました。見苦しいところを見せて…」
「なに、捜査が長引いている。いらつくのも分るさ」
「…はい」
「うなぎみたいな男だな、アダム・ハートは」
「…」

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「俺は、アイツがまだ巡査だった頃から知ってるよ。いつもニコニコして、人当
たりがよくってなあ。頼りなさそうな若造だと、内心なめてかかったもんだ」

確かに、兄貴はいつも笑顔だ。
もともと顔立ちが優しいし、声の調子や物腰もやわらかで、人に警戒心を抱か
せないタイプの男なんだ。

「だがな、つき合うにつれて分ってきた。あれは外見ほど、やわじゃないし、お
人良しでもない。むしろ誰よりも深く物事を考えてる男だ」
「そうでしょうか」
僕は少し疑問だった。
「お前にも、いずれ分るよ」

あとな、とダンカーは付け加えた。

「さっき、あいつが見ていた掲示板は、市民から多数の情報が寄せられる
掲示板群の一部だよ」
「?」
「放火犯についてのスレッドが、複数できてる。あいつは仕事の合間に、
ずっとその内容をチェックしてるんだ。」
「…そう、だったんですか」
「ま、有象無象が書き込むものだから、内容の真偽は怪しいだろうな。だが
仮にAという書き込みがされた場合、Aの内容そのものより、書き手がなぜ
Aを書いたのか、という推論は出来る。ハート警部補は自分のセンサーに
引っかかる情報を逐一チェックして、俺に報告してるのさ」



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「兄貴…」
「んー?」

カチョカチョ、とマウスのクリック音が、静寂の中に響く。

「さっきは、八つ当たりして、ごめん」
「お前は腹が減ると、いつもそうだよ」
「ごめん」

兄貴は顔を上げて、笑った。
「今晩、うちに来るだろ?」



僕は、こくんと子供のようにうなずいた。




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