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ここはPCゲーム『ザ・シムズ2』の 物語風プレイ日記を公開しているサイトです
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03 / 03 Sat 21:38 #御風 ×
あたしが炎恐怖症になったのは、十代の頃のちょっとした事故が原因だ。
…いや、実を言えば、ちょっとしたなんてもんじゃなかった。
何しろ、あたしと母さんはその火事で、あわや死にかけたんだから。

十年ほど前。

母さんが、サイラス・ウィンターと再婚することになり、娘達(つまりローリン
姉さんとあたし)との初顔合わせの日のことだった。
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あたしも、ローリン姉さんも、母さんの結婚には賛成だった。
教師をしているという、サイラスの人となりも気に入ったし、何よりもずっと独
り身を通していた母さんに早く幸せになって欲しかったから。

そんなわけで、会合はなごやかに進み…

当時、フィーべはまだ雑貨屋ではなく、店内には喫茶コーナーがあった。
母さんはそこで、クレープシュゼットを皆に振舞おうとしたのだ。
しかし、まさかそれが、あんな事になるなんて…

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今でも、なぜ料理スキル最高だった母さんが、あんな事故を起こしたのか
分からない。多分、不運だったんだろう。
あたしと母さんは全身にやけどを負い、病院に搬送された。
一時は生死が危うかったそうだ。
幸い、ブライトリバー病院の高い医療技術のおかげで、あたしも母さんも身
体にやけどの跡も残らず、無事に退院することが出来た。

ちなみに、以来我が家ではクレープシュゼット、またそれと同じ危険性を持つ
ベークドアラスカを作ることは禁止されている。

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もう随分、昔の話だ。

母さんの前で、この事故の話を持ち出すことは、姉さんも、あたしも意識的
に避けている。
あんまり辛い思い出だからね。

実は、母さんは、あたしが炎恐怖症になったことを知らない。
あたし自身、退院してしばらくは気がつかなかった。もともと料理は得意な
方じゃなかったし…ある日、珍しくガスコンロを使おうとして、初めて気がつい
たのだ。
火を使おうとすると、指がふるえて、冷や汗が出てとまらない。
そんな馬鹿なと思っても、身体がどうしても、言う事を聞いてくれなかった。

姉さんには、一応相談した。
けど、事故を起こした自分への罪悪感に苦しんでいた母さんには、どうして
も言えなかった。母さんは事故を悔やむあまり、サイラスとの結婚を止めよう
としていたんだ。苦しむ母さんの背中を後押しして、二人が無事に結婚した
時は、ホントにほっとしたものだった。

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ネリーに婚約を申し込まれた時、彼に自分の恐怖症の話をした。
「だから、あたし料理はできないよ」って。
そうしたら、ネリーは
「じゃあ俺が料理すればいいさ。アンジェラはそれ以外のことをすればいい」
と言って。

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光る婚約指輪を、あたしに差し出してくれた。



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局長に、放火魔を追わせてくれと迫ったのも、そもそもは火をいたずらに弄ぶ、
卑劣な放火犯が憎かったからだ。
あと、当然ながら、スクープ記事も欲しかった。ダルトンの署名入りの記事を
世に出したかったんだ。
すべてが、あたしを動かす動機になってる。

そりゃ、放火犯を捕まえたからって、あたしの炎恐怖症が治るわけじゃないだ
ろうけど、自分でも分からない何かに、一矢報いることが出来るような気がす
る。
馬鹿みたいだけど、そんな事を考えていた。



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ガーティと別れた後、フロータウンの現場の一つである、書店に向かった。
ここは新聞局に程近い。今日はここを取材したら、帰還するとしよう。

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資料によれば、事件の起きた時刻は午後4時。まだ日も暮れないうちから、大
胆な犯行をしたものだ。
まあ、ここのゴミ捨て場はかなり奥まったところにあり、いざ忍び込んでしまえ
ば誰にも見られる事なく火をつけることができる。
ちなみに、火に気がついたのは、アルバイトの店員だったそうだ。
今日、店に出てるかな~。

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「ねえ、ここって放火の被害に遭ったんでしょう?事件を発見した人、いま
いるかしら?」
記者と名乗ってから、そう問いかけると、レジにいた男の子からあっさりと
返答をもらった。
「あ、それ僕っスよ」
「え、まじ?」
「さぼろうと思って裏のゴミ捨て場に言ったら、なんかゴミに火がついてて
めっちゃびびったッス」
「そうなの。でもおかげで、火事を未然に防げたわけね」
「でも店長には、サボリがばれて、おこられたッスよ。もっと感謝してくれて
もいいのにね」
「ホントよね」

あたしが相槌を打っていると、背後からいきなり声がした。

「こら、お前どこの記者だ!」
あん?

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声の主は、パトロール中とおぼしき警察官だった。
ネリーの同僚は何人か知ってるけど、この顔は見覚えないなあ。
あたしは、じろっと相手を睨んだ。

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「なに?メディアが取材しちゃまずいって法でもあるわけ?」
「事件については、警察から情報提供されているはずだ」
その提供とやらが、限定的だから、こうして捜査してるんでしょーがっと胸の中
で呟く。
「おたく、言論の自由って言葉、知らないの?」
「自由の前に、市民の安全が最優先だ」

ああもう、官とペンの尽きることなき争いってか。
「こっちは何も捜査の邪魔してるわけじゃないわよ、当事者にインタビューして
るだけでしょ?」
あたしがイライラと手を振り上げると、第三者の声がかかった。

「何だ、なにをもめてるんだ?」

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「あ、ハート警部!すみません、この記者が勝手に放火犯について、インタビュー
をしているところを、本官が発見いたしまして…」

ハート警部?

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…って、なんだ。
アダム兄ちゃんじゃないの。


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「パーカー巡査、君が仕事熱心なのは大いに評価するよ」
「はっありがとうございまス!」
「うん、じゃあ今日はもう署に帰還しなさい。パトロールコースBでね」
「はい。しかし警部、この記者のことは…」
パーカーとやらが言いかけると、警部は「パーカー君」と、にっこりと笑って

「コースB」
「…はい」

やわらかいながらも、ぴしりとした口調で、有無を言わさずに巡査を退却
させてしまった。さすが警察、麗しき縦社会。

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「アダム兄ちゃん、こんなところで会うなんて、奇遇ね~」
「偶然じゃないだろ、アンジェラ。まーた単独取材してるのか」
「…まあね」
「まったく、じっとしていられないところは、昔から全然変わらないな」

アダム兄ちゃんとあたしは、子供の頃から近所づきあいをしていた仲だ。
男兄弟のいなかったあたしにとって、兄ちゃんは本当の兄貴みたいな存
在だった。
ちなみに、アダムの弟のマイケルは、あたしの子分格である。

話をしているうちに、いつの間にか窓の外が暗くなっていた。
日が落ちたらしい。

「そうだ、アンジェラ良かったら、これから夕飯でも一緒にどうだ」
げぷ。

さっき、ガーティと食事したばっかりで、お腹は全然空いてないんですけ
ど…でも、せっかく久々に会ったんだし、放火事件の捜査本部にいるであろ
う彼とは、もう少し突っ込んだ話がしたいなあ。

「どうせ、新聞局に戻るんだろう?あそこのビルの一階にある、中華料理屋
美味いんだよな」
「あージョウさんの店ね」
帰るついでだし、ちょうどいいか…と言うわけで、結局あたしはアダム警部と
夕飯を共にすることにした。

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中華♪中華♪と嬉しそうに乗り込んだアダムを、あたしは横目でちろりと
眺めた。

「…兄ちゃん、ちょっと腹出たんじゃない?」
「…言うな」

警部殿はふっと黄昏たような顔になった。
が、中華料理を断念するつもりはないらしい。

そんじゃま、局へと向かいますかね、と。


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