ここは『ベルヌイ』。
…仏語で「美しい夜」という意味の名を冠した、老舗のナイトクラブだ。
『KISXXX』に比べると、まだ幾らか品の良い店がまえ。
が、調べによれば、ここもブランドンファミリーの庇護下にあるらしい。
カウンターに座ると、ちょっと男前なバーテンに話しかけられた。
「お姉さん、記者?」
「へえ、一目見ただけで分かるの?」
「ここに立って色々見てるとね、見分けられるようになるんだ」
そう言って、穏やかに微笑む。
このバーテン、なかなか如才ない。それに勘も鋭いみたいだ。
『KISSXXX』の店番の男は、とても取り付く島がなかったけど、彼ならあた
しの知りたかった情報を教えてくれるかもしれない。
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「…面倒ごとは、好きじゃないんだ」
「…」
「どうせ、穏やかな話題じゃないんだろう?そうだな、さしずめブランドンファ
ミリーに関する事柄ってところか。違う?」
ビンゴ
「リラード・ブランドンに会うには、どうしたらいいの?」
「…」
ブランドンファミリーのトップ、リラード・ブランドン。
たかが一介の記者であるあたしにとって、彼は殆ど雲の上の人物に近い。通常
の取材ならば、正規の手続きを踏んだ上で、取材依頼をすればいい。けれど、今
回のように、相手が一般人ではない場合…
いちかばちか、彼の周辺から攻めてみるしかない。
「どこへ行けば、彼と話せるかしら」
「知らないね。俺は、ただのバーテンだよ」
「バーテンダーは、夜の世界のことなら、神様よりも詳しいんじゃない?」
「おだてても、無駄。」
…
かさり。
紙幣を無言で、グラスの下に挟むと、バーテンの目がちらっと素早く動いた。
「…」
――――――――――週末の夜は、愛人の店によく現れるそうだけど
「…ありがと」
小さく礼を言うと、あたしは急いで席を立った。
運の良いことに、今日は金曜。週末の夜に入ったばかりだ。
ルビークラブに行けば、リラード・ブランドンを取材できるかもしれない。急い
で向かわなければ。
…
それにしても…
店を一瞥して、ちょっぴりゲンナリ。
娘ほども年の差がありそうなムスメ相手に、鼻をだらりと伸ばしたオヤジが
いっぱいだよ。いい年して、やだねえ。
こういう店で羽根を伸ばしたがる気持は分からなくもないけど、昨今は計算
高い娘が多いからな~。
気がつけば、尻の毛まで抜かれてました、なんてことにならないよう、せい
ぜい気をつけて頂きたいものです。
なんて、大きなお世話だけどね。
さ、目的地へ急ごうっと。
>>NEXT >>MENU >>BACK
…仏語で「美しい夜」という意味の名を冠した、老舗のナイトクラブだ。
『KISXXX』に比べると、まだ幾らか品の良い店がまえ。
が、調べによれば、ここもブランドンファミリーの庇護下にあるらしい。
カウンターに座ると、ちょっと男前なバーテンに話しかけられた。
「お姉さん、記者?」
「へえ、一目見ただけで分かるの?」
「ここに立って色々見てるとね、見分けられるようになるんだ」
そう言って、穏やかに微笑む。
このバーテン、なかなか如才ない。それに勘も鋭いみたいだ。
『KISSXXX』の店番の男は、とても取り付く島がなかったけど、彼ならあた
しの知りたかった情報を教えてくれるかもしれない。
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「…面倒ごとは、好きじゃないんだ」
「…」
「どうせ、穏やかな話題じゃないんだろう?そうだな、さしずめブランドンファ
ミリーに関する事柄ってところか。違う?」
ビンゴ
「リラード・ブランドンに会うには、どうしたらいいの?」
「…」
ブランドンファミリーのトップ、リラード・ブランドン。
たかが一介の記者であるあたしにとって、彼は殆ど雲の上の人物に近い。通常
の取材ならば、正規の手続きを踏んだ上で、取材依頼をすればいい。けれど、今
回のように、相手が一般人ではない場合…
いちかばちか、彼の周辺から攻めてみるしかない。
「どこへ行けば、彼と話せるかしら」
「知らないね。俺は、ただのバーテンだよ」
「バーテンダーは、夜の世界のことなら、神様よりも詳しいんじゃない?」
「おだてても、無駄。」
…
かさり。
紙幣を無言で、グラスの下に挟むと、バーテンの目がちらっと素早く動いた。
「…」
――――――――――週末の夜は、愛人の店によく現れるそうだけど
「…ありがと」
小さく礼を言うと、あたしは急いで席を立った。
運の良いことに、今日は金曜。週末の夜に入ったばかりだ。
ルビークラブに行けば、リラード・ブランドンを取材できるかもしれない。急い
で向かわなければ。
…
それにしても…
店を一瞥して、ちょっぴりゲンナリ。
娘ほども年の差がありそうなムスメ相手に、鼻をだらりと伸ばしたオヤジが
いっぱいだよ。いい年して、やだねえ。
こういう店で羽根を伸ばしたがる気持は分からなくもないけど、昨今は計算
高い娘が多いからな~。
気がつけば、尻の毛まで抜かれてました、なんてことにならないよう、せい
ぜい気をつけて頂きたいものです。
なんて、大きなお世話だけどね。
さ、目的地へ急ごうっと。
>>NEXT >>MENU >>BACK
PR
TRACKBACK URL :