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ここはPCゲーム『ザ・シムズ2』の 物語風プレイ日記を公開しているサイトです
05 / 19 Sun 10:33 ×
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10 / 15 Sun 01:52 #御風 ×
学校から戻っても、まだ胸がむかむかしていた。
レナード・ブラックの嘲笑が、まだ目の前にちらついて、どうしても消えない。

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突然、バービー・ライトと、キッド・バークレーが大喧嘩を始めたせいで、僕とあ
いつの対立はうやむやになってしまった。
あれから、数時間。頭に昇った血はさすがに幾分冷めたけど、それでも収ま
らない怒りが、腹の中でヘビのようにとぐろを巻いている。

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子供のために、毎日一生懸命、市長官邸で働いている母さんをあんな風に貶め
られるのは許せなかった。
それでなくとも、僕は両親の話になると、敏感になってしまうんだ。
だって、僕は、父親の顔を知らないんだ。顔だけじゃない…名前も、職業も。
母さんは何一つ、教えてくれなかった。

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この日の夜遅く、僕はこれまで幼い頃から何度か繰り返した質問を、再び
母さんの前で口にした。
「母さん、おねがい、父さんの名前を教えて」
「レオン…」
母さんが困った顔をした。僕はいつもこの顔を見るたびに、胸が苦しくなる。
でも今日は、あきらめ切れなかった。
「じゃあ、せめて父さんの写真を見せてよ、本当はあるんだろ?」
「…ないのよ」
「父さんの顔が、知りたいんだ」
「本当にないの、レオン。父さんは、写真を取られるのが好きじゃなかったのよ」
「そんなのうそだ!」

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母さんの答えは、いつも同じだ。
「恋人同士だった頃の写真もないなんて、そんなの変じゃないか!」
「落ち着いてよレオン」
そのとき、レイラの声がした。
「うるさいなあ、お兄ちゃんの声、二階まで響いてるよ」

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「どうしたの、ママたちケンカしてるの?」
パジャマ姿で、目をこすりながら妹のレイラが立っていた。
「違うのよレイラ、いいから寝てて、ね?」
母さんがおろおろしている。僕は不意に強烈な自己嫌悪に襲われて、母さんに
背を向けると、そのままだっと二階の自分の部屋へと駆け込んだ。

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結局、母さんを苦しめるだけだった。父さんについて知ろうとすると、僕も母さんも
悲しくなるだけなんだ。
でも、何故隠そうとするんだろう…。せめて名前だけでも教えてくれたら、僕の気も
少しは収まると思うのに。

コン、コン
小さく、ノックの音がした。

「お兄ちゃん、入るよ」
レイラだ。怒ったような顔をしている。
「ママを困らせるなんて、お兄ちゃん最低」
「おい」
「どうせ、またパパのこと探ろうとしたんでしょう。ママが悲しむって知ってるの
に、何でわざわざそういうことするのよ」
「…」
小学生の妹に説教されるなんて、情けない兄貴だ。

「母さんを困らせるつもりなんか、なかったんだよ」
「知らない、そんな言い訳」

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「だって…お前、父さんのこと、知りたくないのか?」
レイラは、目線を床に落とした。

返答があるまで、少しの間があった。
「ママが隠すのは、きっと隠す理由があるんだと思う」
「…」
「ママはあたしたちを愛してくれてるもん。頼りないけど、お兄ちゃんもいるし
今はそれでいい」

言葉につまった僕を尻目に、レイラは小さく「おやすみ」とつぶやいて、さっと
身を翻して部屋を出て行った。
僕は呆然と突っ立って、静かにしまったドアを見ていた。
大人すぎる妹と、子供すぎる自分と。

ベッドに横たわり、明日は母さんに優しくしようと、思った。




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