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ここはPCゲーム『ザ・シムズ2』の 物語風プレイ日記を公開しているサイトです
05 / 19 Sun 09:11 ×
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04 / 25 Wed 03:22 #御風 ×
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俺が、警察から戻った日の夕方。
家族のみんなが、晩餐を共にするために続々と家を訪れてくれた。メンバー
は、兄貴のマイケルと、姉貴のガーティ、そして姉貴の旦那、ジェシーだ。

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「アイザック」
兄貴の声が、すごくなつかしく感じられた。

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「…無事に戻れてよかった」

「兄貴、色々とありがとう」

「なーに、神妙な顔で言ってやがる」
兄貴はにやっと笑い、そして言った。

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「よく頑張ったな」

その一言で、不覚にも、じわっと涙が出そうになった。

実を言えば、今回、俺は何も頑張ってなんかない。警察の権威の前に縮み
上がり、拘置所でべそかきながら、震えることしかできなかった。
…こんなことが起きる前は、もう少し自分は強い男だと思っていたんだけどな。
いざとなると、けっこう、俺は弱い人間だった。

だから、本当に頑張ってくれたのは、兄貴を始めとする、俺の家族だ。

だって、俺が拘留されていた間。
母さんたちや姉貴は忙しい合間をぬって、何度も何度も、警察と家の間を行
き来してくれていた。
兄貴は警察の対応に激怒しながらも、弁護士との話し合いに奔走してくれた。

警察に拘留されている間――――俺はずっと、一人じゃなかった。
それが分っただけで、今回の苦い体験は、帳消しになるような気分だった。

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「父さん、色々と心配かけて、ごめん」
俺の言葉に、親父は嬉しそうに笑った。
「今回は、いつもと立場が逆だったなア」
「はは…」
そう言えば、そうだったかもしれない。

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姉貴には、ちょっぴり怒られた。
「もーあんた、母さんを心配させちゃダメでしょ、もう年なんだから」
「うん。ホント、ごめん」
「あんたに油断やスキがあるから、変な事件に巻き込まれるのよ。もっと普段
から気合入れなさいよ」
「分ったよ、もう」

でもその後、姉貴は俺の頭をぽんぽん、と叩いて

「戻ってこれて、よかった」

と、ぽつりと呟いた。
その目が少しうるんで見えて、思わず見間違いじゃないかと目をこすりそうに
なった。


一方、母さんは。

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思い思いの話題に興じるゲストを尻目に、せっせと夕飯の準備にかかってい
る。

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「ポークチョップか。へえ奮発したもんだな、母さん」
「ごちゃごちゃ喋ってないで、席につきな。もうよそっちまうから」

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にぎやかな食卓に、そろそろ空の皿が目立ち始めたころ。
親父がいきなり、グラスを持ち上げて、言った。

「乾杯しよう。アイザックの釈放を祝って!」

いや親父、俺は別に逮捕されたわけじゃないので、釈放って表現はどうだ
ろう。まあ、こういう時、どんな表現が妥当なのか、俺もよく知らないんだけ
ど…。


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「…」
ま、いいか。この際、こまかいことは。

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「乾杯!」

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警察に連行された、あの悪夢の夜以来、この日の晩は俺にとって、もっとも
幸福な夜となった。

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やがて、ガーティたちが帰り…

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兄貴は、今日、久々に家に泊まっていくという。
嬉しくって、俺は明日が学校だというのに、随分遅い時間まで、兄貴とずっと
語り合ってしまった。

その中で、兄貴にこんなことを聞かれた。

「アイザック、お前、将来についてどう考えてる?」

「・・・・」

将来、か。

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「昔から、実業家になるのが夢だったし、それは今でも変わらないよ」

「そうか」

「でも、今回の件とか、あと他にも色々とあったから…考えたことがある」

俺の答えに、兄貴は眼鏡をちょっと動かして、興味深げに聞いた。
「なんだ?」

「うん。なんかさ、俺…単に金をもうけるだけじゃなくて、もっとそれ以上のこと
がしたい。世の中の役に立つとか…とにかく、どこに出ても胸を張れるような
人間になりたいと思った」

世が更けて、辺りもしんと静まり返っている。
兄貴の穏やかな目を見返しながら、俺は続けた。

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「世の中って、本当にいやなやつがいっぱいいる。でも仕事して金を稼ぐって
すっげー大変なことで、頑張って頑張って、その挙句に道を見失う人間が出る
のも何となく分る気がするんだ。
俺、自分もそうなる可能性があると思う。けど、なりたくないんだ」

そう、例えば、バーナードのような人間には。
俺は従業員を見下したり、給料をピンはねしたりする、そんなモラルに欠けた
経営者には絶対にならない。まっすぐで、清廉な経営者になるんだ。

「なるほど、お前の言いたいことは理解できるよ、アイザック」

けどな、と兄貴は言った。

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「もしお前が事業で本当に成功を収めたいのなら、今言ったことを実行に移す
のは相当に難しいぞ。おそらく、お前が考えている以上にだ」

「・・・・」

「お前も、そして俺も、ゼロから起業する立場だ。なんの基盤があるわけでも
コネがあるわけでもない。資金力は貧弱、あらゆる経験をイチから積まなくちゃ
ならない・・・俺たちは、恵まれた人間に比べればスタート地点からして、何km
も後方にいるんだ、それはお前も分ってるな?」

「…分ってる」

「お前の考えは正しいよ。確かに経済人として失っちゃいけない姿勢だ。けど
一番大切なのは、現実をしっかり見極めて、あくまでもその中で最善を尽くすこ
とだ。」

最善を尽くす、か…。

「分ったよ、兄貴」
俺は、うなずいた。



やがて、俺たちは各自のベッドに入った。
なかなか寝付けず、俺はなんとなく十年後、二十年後のことを想像してみた。
例えば、高級車を乗りまわし、財界の大物とパワーランチをとる俺の姿。
海外を飛び回り、各地の支店や工場の視察をする兄貴の姿。

その頃になっても、俺たち家族は、今のようにしっかりと結びついていられる
だろうか?今日の晩の暖かな乾杯を、忘れずにいられるだろうか?

まだ見ぬ未来に思いを馳せながら、俺はゆっくりと眠りに落ちていった。


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