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ここはPCゲーム『ザ・シムズ2』の 物語風プレイ日記を公開しているサイトです
05 / 19 Sun 10:57 ×
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06 / 06 Wed 22:53 #御風 ×
ガション ガション

ひい、はあ、ひい…

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ぜへ ぜへ ぜへ

「も、もう、むり、です」

「喋る元気があるんなら、大丈夫だ。そのまま、もう2セットな」

お、鬼だ、このジジイ…。

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結局、あれから僕は、このボクシングジムに通っている。
すぐにでも打ち合いをさせてくれるかと思いきや、ずっと筋トレ、筋トレ、筋
トレ…の毎日だ。
このジムのオーナーであり、たった一人のトレーナーであるキースに、一度
打診してみたけれど、返ってきたのは答えは・・・・「お前にゃまだ早い」
怖い顔で、これだけ。

自分でも、格闘技のセンスがあるとは思わないけど、そんなに見込みがな
いのか、僕は?
軽く打ち合うくらい、させてくれたっていいのに…

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だっだっだっ…

「あのー」

荒い息の合間に、キースに聞いてみた。

「何だ、小僧」

「…なんで、こんなに、ボクシング以外のトレーニングばっかり、させるん
ですか?」

「強くなりたいんだろう?」

「そりゃ」

そうだけど、と足元を見つめて呟いた。
レナード・ブラックの顔が、まぶたの裏にちらついて、すぐに消えた。

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「それじゃなにか、お前は強さを得るのに、なんか上手いコツや、楽な近道が
あるって本気で考えてんのか」

「・・・・・・・・」

どきっとした。



「うわっ」

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ずでべっ

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「なにやっとるんだ、あほう」

「・・・・・・・・・」

傷口に塩を塗りこむような発言は、頼むから止めて欲しい。

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しかし――――

その後キースは「まあ、そろそろいいだろう」と言って、僕に初めてサンドバッ
グへの打ち込みを許可してくれた。

「自分の身体の変化を、実感するといいさ」

「?」

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「こい、レオン!」

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「このサンドバッグを、倒したい相手だと思って、かかってこい!」

…あ。
今、僕の名前、はじめてレオンと呼んでくれた。小僧とか、あほうじゃなく。

よーし

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「レオン、いきます!」

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バスーン!

「よっしゃ、もう一度だ!死ぬ気で打ち込め!」

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バスーン!



バスーン!


バスーン!







…確かに、僕の身体は以前よりもずっと動くようになっていた。関節のやわ
らかさも、全身の筋肉への意識も、全てが段違いだ。

「分ったろう、基礎が大事だってことが」

打ち込み終了後、キースに言われて、僕はうなずいた。額の汗がぱた…っと
床に滴り落ちる。
格闘技のセンスとか、そういう言い訳をするのは、もう止めようと思った。





ぐるる

「腹が減ったか?」

げ、聞こえた?

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「うちで飯食ってくか?」

「…」

「遠慮はいらん、どうせマズイからな。わしの手料理だ」



なんのフラグだ。

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キースの自宅は、ジムのすぐ隣りにあった。小さな平屋だ。
手料理ってことは…彼は独り暮らしなんだろう。

庭の片隅に、ゴミにまぎれて空の酒瓶が転がっている。
こう言っちゃなんだけど、敷地内はけっこう荒れた雰囲気だった。

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…あんまり、家族の事とか、聞かないほうがいいのかもしれない。

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室内に入ると、想像通りの殺伐さだった。おまけに、テーブルの上に、また
酒瓶がある。

「その辺の椅子に座っとけ。すぐに出来る」

僕は足元に注意しながら進み、ダイニングテーブルの椅子にこしかけた。

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ふと、左手の壁に顔を向けると、あまり目立たない場所に、何かの彰状らしき
ものが飾られているのが目に入った。

「何だ、これ…?」

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――――キース・マーティン刑事 殿

…における強盗犯逮捕の功績により、ここに表彰するものである…


え?

刑事?
キースって、昔は警察官だったのか!?

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「なにやっとんだ、こら!」

「あ、ごめんなさい…キース、刑事だったんですね」

「む、うむ…まあな、過去の話だ」

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「すごいなあ、強盗犯を逮捕して、表彰されるなんて」

「…ちっ、いいから席に着け!あんまりジロジロ見るな」

「え、何で、わざわざ飾ってあるんでしょ?」

「違う、なんていうか、ほら、一種の覚え書きみたいなもんだ。忘れんように
冷蔵庫に貼っておくような…だいたい普段は、この家に客なんか来ないんだ」

驚いた事に、キースは、どうやら照れているらしい。この爺さんの、意外な側
面を見たようで、僕はちょっとおかしくなった。



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カチャ カチャ

「…あれ?」

「なんだ」

「いや、意外に美味しいんで、びっくりしました」

「黙って食え」

「はい」

カチャ カチャ


その時、電話のベルが鳴った。

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「…なんだ、お前か」

受話器に耳をあてたキースの口調が不意に低く――――硬いものになった。
そのまま、ボソボソと話し続ける。

「ああ…いや…悪いが、最近は忙しくてな」

『――――――――』

「暇がないんだ。もういいだろう、放っておいてくれないか」

『――――――――』



そして、通話は途切れた。

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「・・・・」

「・・・・」

微妙に、気まずい沈黙が漂う。

「…わしの、息子だ」

僕からたずねるまでもなく、キースの方から打ち明けた。

「昔、仲たがいをしてな。それ以来、ずっと顔も合わせてない…すまんな、食事
の途中に辛気臭い話を」






息子、か。


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