俺様の名前は、紹介するまでもない。そう、キッド・バークレーだ。
一代で莫大な富を築き上げた、サロモン・バークレーの後継者が、この俺だ。
悲しいことに父は高齢だったため、俺が小学生のときに他界した。
俺が成人した暁には、このブライトリバーでも一、二を争うといわれる巨額の
資産が俺のものとなる予定だ。
今は、母が俺の資産の後見人をつとめてくれている。
「ふぅ~」
それにしても、どうだこの、ほれぼれするような男前。父譲りのりりしさと、母
譲りのこの美貌がセットで二乗。
存在自体が罪とは、まさにこのことか。
もっとも、俺はこの学校で特定の女など作るつもりはない。
悲しいかな、ここには下賎な女どもしかいないからだ。俺の女の趣味は、美し
い母を持っているだけあって、高尚なものだ。
…特に、ぶすとデブだけは、我慢がならない。
だから、ブスでけばくて猿のように乱暴な、あのバービー・ライトのような女だけ
は絶対に!死んでも!お断りだ。
あの女のせいで、俺は親の呼び出しという屈辱的な目に合わされたのだ。
ヤツの母親とかいう女は見ていないが、さしずめアイツに良く似た、ブス鼻の
中年女に違いない。
あの騒動の後、バービー・ライトは事あるごとに、俺に突っかかってくる。
まったく、これだからブスというのは始末に負えないというのだ。
これが俺の母、ロージー・バークレーだ。
その名の通り、大輪の薔薇のようにあでやかな女性。美貌は年を経てもなお
全く色あせていない。母は俺の理想の女性だ。
俺の家族を一応、紹介するとしよう。
俺には一応、姉と兄が一人ずついる。どちらも母が結婚する前に生んだ、父
なし子だ。尚、姉は存在を知るのみで、俺は会ったことがない。
これが、異父兄のデヴィッド。俺が小学生の頃、バークレー家にやってきた。
十代までは孤児院で育ったそうだ。何でも父親の顔も知らないという。
大学を卒業し、母からの遺産のおこぼれで、悠々と暮らせれば、それで十分
満足という、小さな人間だ。大学では経済学を専攻していたが、成績が悪くて
一度退学になりかけた。
まあ、とるに足らない人間だ。
これは、兄の妻。ベル・バークレー。
旧姓はベル・ジャガードと言って、あの映
画監督マット・ジャガードの娘だ。父親の七光りを利用して、女優を目指してい
るらしい。大学で兄と知り合い、卒業と同時に結婚した。
俺の趣味から言えば、がさつでイマイチ品がない女だ。八方美人でもある。
まあデヴィッドを選んだという時点で、女としては下等だろう。
CMでポテトの格好をしているのが、お似合いといったところだ。
そしてこれが…我が屋敷にたかるウジ虫。ガイ・バーグマン。
こいつは家族ではない。ただのウジだ。
つまり、俺の母の目下の恋人である男なのだ。
やつは現在、我が家で寝起きをしている。
ガイは、以前はフロータウンでバーテンダーをしていたそうだ。
サロモンの妻であった母が、ただのバーテンなんかと恋に落ちるなんて!
…いや、だが母はおそらく寂しかったのだろう。
父が死んで、もう何年にもなる。母に非はない。
だが、俺はこの男を母のパートナーとして認めることは出来ない。
見ていろ。成人を待つまでもない、俺は貴様をかならずバークレー家から追い
出してやる。
>>NEXT >>MENU >>BACK