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ここはPCゲーム『ザ・シムズ2』の 物語風プレイ日記を公開しているサイトです
05 / 19 Sun 09:01 ×
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10 / 29 Sun 22:03 #御風 ×

俺は、夜の街が好きだ。
昼間のもっともらしく整った町並みは、どこか嘘臭い。その光景が明るく小
奇麗であればあるほど、逆に作り物めいて見える。

もっとも、ある人間に言わせれば、それは単なる睡眠不足からくる『妄想』
なんだそうだ。夜遊びなどせずきちんと睡眠をとれば、昼のリアルも、もっと
ちゃんと感じられるだろうと忠告された。
だが、俺に向かってそう言った相手は、俺の家の事情を知らない。知った後
でも、同じ台詞を吐けるだろうか、と思った。

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いつもの仲間に声をかけると、すぐに面子が揃った。ノーマとバービー。
以前はもう一人、ジェムってやつがいたんだが、運の悪いことに親が死に、
保護者不在ってことで市の施設に引き取られてしまった。
今じゃ仲間内で話題になることもない。

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ここは、クラブ『ミッドナイトフローズ』。
言うまでもなく、親父の店だ。以前は流行らないナイトクラブだったものを、親父
が敷地ごと買取って、全面改装を加えた。
例の赤毛、ブランドンが仕切る店の一つでもある。

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「あ、これはレナード様。いま、お席へご案内します」
「ああ、頼むよ」
「どうぞ、こちらへ…」
何にせよ、持てる特権は利用しなきゃな。

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「あたし、モスコ」
バービーはいつも、ジュース系の甘い酒しか飲まない。一方、ノーマは
「ジン、ロックのダブルで」
「いきなり飛ばすな、おい」
「るっせーな。飲みたい気分の時もあるんだよ、女には」
…そんなの、女に限ったことでもないだろうが。
今日の、というより、最近のノーマはいつもイライラしている。おおかた母親とまた
ケンカでもしてるんだろう。こいつの家庭も、色々とあるのだ。

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いい飲みっぷりだ。バービーの方も何かもやもやした気分だったらしい。やけ
を起こしたような飲み方をしている。
「バービー、何かあったのか」

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「…別に」
笑ってみせるが、別にという顔じゃない。
日ごろはうるさい程、陽気な女だから、少し気になった。

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その後、のどの渇きを覚えた俺達が、二階のバーで再び飲んでいた時。
ようやく、バービーが口を割った。

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「ごめんねー、今日、あたしノリ悪くて」
学校のことで、今日ママとスゴイやり合っちゃってさ…と、肩をすくめながら
冗談めかした口調で打ち明けられた。
ああ、と俺は納得した。
「キッドのことか」
先日、バービーは教室でキッドに張り手をくらったのだ。一見、ちゃらちゃらし
て見えるが、バービーはやられて黙っているような女じゃない。逆につかみ
かかっていったところを、丁度入ってきた教師に取り押さえられたのだ。

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「大体、あれくらいで何で親呼ぶ?って感じじゃん、あの眉毛」
眉毛とは、ハイスクールのレスター・ラムゼイ校長のことだ。
若くして校長になっただけあって、規律にうるさく、そのうえ暑苦しいほどの教
育熱を持っている。

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「キッドのやつも、母親が来たらしょげてたな」
バービーが、ぷぷ、と意地悪く笑う。
「笑っちゃうよ、あいつ自分の母親のこと『お母様』って呼んでんの、きも過ぎ」
よほど腹に据えかねているらしい。酒の効果も手伝ってか、次々と愚痴が出て
くる。
しかし余談ながら、キッドの母親は意外にもたいした美人だった。
噂じゃ、60歳以上も年上のサロモン・バークレーを色仕掛けで射止めたという。
そういや、どっかの国でも、そんな話題があったな。

「あの白ブタ、いっぺんシメるか?」
ノーマが剣呑な目で俺を見ながら、言った。そして続ける。
「でもレナード、言っとくけどお前にも責任あるぞ
。いきなりブロッサムなんかに
ちょっかい出して、何なんだよあれ」

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「…」
「あんな地味ガキ、構うなんてお前らしくない」
俺は肩をすくめた。
「ちょっとからかってやったら、向こうが勝手にキレたんだよ」
「ふん」
鋭い目でにらまれた。
「アタシんちも、父親いねーよ。母親、冗談抜きでオトコの二号だしさ、お前、
そういうの知ってるじゃん」
「ああ」
「今まで、お前は善人じゃないけど、ああいう話題で、他人をからかうような
ヤツじゃないと思ってたよ」

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「悪かったな、失望させて」
「別に、アタシは当事者じゃねーし、他人に期待もしないから失望なんかもし
てないよ。ただ、ちょっと気になっただけ」

ノーマは、俺から目をそらし、そう言った。


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