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ここはPCゲーム『ザ・シムズ2』の 物語風プレイ日記を公開しているサイトです
05 / 19 Sun 09:51 ×
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10 / 30 Mon 00:45 #御風 ×

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「…」
確かに、レオン・ブロッサムなんて、俺にとってどうでもいいヤツのはずだ。
だがあの時…ヤツの母が市長官邸で働いていると聞いた時…俺は理由
もなく、あいつが憎らしくなった。
自分でも自覚している性癖なんだが、俺は他人をいたぶり出すと徐々に
興が乗ってきて、なかなかそれを止めることが出来ない。

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母子家庭とは言っても、一目見るだけで、あいつがどれほど真っ当に育て
られてきたか、すぐに分かる。
きっとあいつの母親は、酒もドラッグも売春もやらない、優しい良い母親なん
だろう。
別に、俺の母親だってそう悪い女じゃない。上記のような悪習をやるわけで
もないし、父を愛していると、側にいれば、はっきり分かる。
だが、俺の母はどれほど高級な服を身にまとおうと、どれほど高価な宝石で
かざろうと…

やはり、マフィアの、女だ。

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「なんかさ…早く大人になりたいって思うよ」
バービーが、どこか潤んだような眼で、呟いた。
「あたし何だかんだ言って、ママ好きだけどさ、それでもやっぱり子供って不自由な
ことが多すぎない?」
「だよなー」
ノーマが同意する。バービーは独り言のような口調で、話し続けた。

「あのさー今まで内緒にしてたけどさ、あたしのお祖父ちゃんってパーシーって
いうんだよ」
「パーシー?パーシー・ライト?」
バービーが、こくんとうなずく。一こまおいてから、俺は目をむいた。
「まさか…前市長のパーシー・ライトのことか?」

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パーシー・ライトの名ならば、ブライトリバー市の人間ならば、子供だって知って
いる。『自由ミルヒー党』の前党首で、足掛け十年以上も市のトップに君臨し続け
ていた著名な政治家だ。
…ここだけの話、俺の父とも親交は深かったらしい。
脳溢血で世を去るまで、まさしく彼はブライトリバー全域を支配していたのだ。

「お祖父ちゃんの話をはじめて聞いた時、すっごい嬉しかったんだよね。あたしに
も親戚がいたんだ~って、超はしゃいだよ」
しかしその直後、親戚に会うことは絶対に駄目だと、母親に釘をさされたのだと
いう。
「縁を切った家なんだから、親戚だと思っちゃ駄目だって。お祖父ちゃんのことも、
あたしがあんまりせがむから、渋々話してくれたって感じだったし」

以上、ちょっとした打ち明け話でした~。
バービーは、いきなり明るい声になり、けらけらと笑った。
「あーすっきりした!前から言いたかったんだよね、うちの事情!母子家庭で
そのうえ妙なわけ有りらしく、親戚一同と関係断絶してますって」
そう言って、カクテルをまたがぶがぶと飲む。

ノーマが、ぽつんと言った。
「親なんか、関係ねーよ。あんな奴ら、こっちが大人になれば簡単に捨てら
れるんだ」

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「お前なら、そうだろうな」
俺は、小さく笑った。

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俺達は何となく沈んだムードになり、店を後にした。
喧騒のピークは過ぎたのだろう、夜中の街は比較的静かだった。

車に乗り込もうとした時、しわがれた声に呼び止められた。
「お待ちなされ、お若い方」
振り向くと、気味の悪い老婆が立って、俺に手招きをしていた。

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「何だよ、てめーは」
街には、時折こういう頭のおかしいヤツが出没する。狂人か、さもなくば山師の
たぐいか…何にせよ、俺の袖を引くとはいい度胸だ。

「うぜーんだよ、あっち行ってろ」
俺が蹴りを入れる振りをしようと
、足を引きかけたその時、老婆が重々しい声で
こう告げた。
「凶相が出ておりますぞ、忌まわしい…兄弟相克の相」
「なんだよヒョダイソウコノソーってのは」

キョ・ウ・ダ・イ・ソ・ウ・コ・ク…でございます。
老婆のしわだらけの口元が、ぐねぐねと発音どおりの形に動く様が不気味だった。

「兄と弟が互いに憎みあい、滅ぼし合う…そういう意味でございますよ。おかわ
いそうに因果がめぐりめぐって、あなた様の運命を蝕もうとしている」

兄と弟が互いに滅ぼし合う。

ぞくっと…背筋が寒くなった。
生まれたばかりのレックスの顔が、不意に脳裏をよぎった。
まさか。あんな小さな弟が、いずれ俺の前に仇として立つというのか。

次の瞬間、俺は老婆の体が折れ曲がるほど、容赦のない蹴りを一発入れていた。
猫が轢かれる時のような、鋭いうめき声を上げて、老婆は道端に崩れ落ちる。
「お前が先に死んどけ、ばばあ」
そう吐き捨てると、俺は荒々しく車に乗り込んだ。

「お前、やり過ぎ」
車の中で、ノーマがぼそっと言った。バービーは青い顔をして、黙ったままだ。
俺は無言のまま、アクセルを踏み込んだ。


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