今日は、ママの妊娠報告も兼ねて、フロータウンに住むママの妹、アンジェラ
おばさんの家にやってきました。お祖母ちゃんも一緒です。



「ハニー、いらっしゃい！わー何だか十代になって、また可愛くなっちゃって」
「前と変わらないよ？おばさん、元気そうで良かった」
「勿論、ばりばりよ～」
アンジェラおばさんは、フロータウンの新聞社で記者をしています。
おっとりしたママとは違って、いつでもすごく元気でパワフルな人。子供の頃
からやんちゃで、男の子とばかり遊んでいたんですって。



そう言えば昔から不思議だったことがあります。写真を見ると、おばさんの髪
の毛は子供の頃から真っ黒なんです。
お祖母ちゃんも、死んだお祖父ちゃんも金髪なのに、何だか不思議ですよね？
ご先祖様の中に、黒髪の人がいたんでしょうか。
食事の後で、お祖母ちゃんに聞いてみようかな。


「元気か、ちびっこー！姉さんに似て生まれるんだよ、分かったね」
アンジェラおばさんは、ママとすごく仲が良いんです。
逆に、パパとはあんまり…。パパは、アンジェラおばさんの前だと、いつもど
こか緊張して、態度がぎこちなくなります。



この人は、ネリーさん。
フロータウンで警察官をしています。アンジェラおばさんとは大学で知り合って
卒業と同時に結婚しました。
ネリーさんの苗字は『ダルトン』なので、アンジェラおばさんも、今はジャクソン
ではなく『アンジェラ・ダルトン』です。
ちなみに、うちのパパは婿養子に入ったので、名前はハル・ジャクソン。
私か、今度生まれる弟か妹が、ジャクソン家の名前を継いでいくことになります。

ところで、ネリーさんがランチをつくってくれている間…



アンジェラおばさんは、ずっとママとおしゃべりしてました。
もしかして…ネリーさん、尻に敷かれているんでしょうか。

おばあちゃんが、見かねたように声をかけました。
「アンジェラったら、手伝いもしないで…ごめんなさいね、ネリー」
「かまいませんよ、お義母さん。久しぶりに会ったんだから、色々話したいこと
もあるでしょう」
「でも、やっぱり」
「いいんですって、それに実はここだけの話…」
ネリーさん、声がひそっと小さくなりました。
「アンジェラがやるより、僕が作る方が、美味いんですよ」
そう言って、ぱちっとウィンク。
お祖母ちゃんは、情けなさそうにハア～ッとため息をついて、肩を落としました。
そう言えば、アンジェラおばさんの手料理、まだ食べたことありません…。



食事の最中、フロータウンの治安の話が食卓に上りました。
最近、フロータウンの一部地域では犯罪発生率が急増しているのだとか…ネ
リーさんは警察官なので、その変化を肌身で感じているようです。
「少年犯罪が増えていることは勿論ですが、それに犯罪組織がからんでい
るのが問題なんです」
「犯罪組織って？」
「いわゆるマフィアよ、ハニー」
アンジェラおばさんが、ソファの向こうから、眉をしかめながら首を振りました。



「どんな都市にも、そういった連中はいるものよ。彼らは頭を頂点に、見事な
ピラミッド組織を形成してる。そしてあらゆる非合法な手段で、市民から金を
吸い上げようとするの、ドラッグ、売春、恐喝…」
「やめなさい、食事中ですよ」
お祖母ちゃんが、嫌そうな顔で、おばさんに注意しました。
私も話を聞きながら、少し怖くなってしまいました。
今度、リナやジェシカとフロータウンにショッピングに行こうと話していたところ
です。
「大丈夫だよ、特に危ないのはフロータウンでも一部の通りだけだから」
ネリーさんが、私の不安を感じ取ったように、フォローしてくれました。

一部の通りって…やっぱり、歓楽街とか、そういうところでしょうか？
私は行ったことがありませんが、そう言えばノーマ・ランゲラクの家はお母さん
がクラブを経営していると、リナから噂で聞いたことがあります。
リナはどこで情報を仕入れるのか知りませんが、色々なことを本当によく知って
いるんです。
そう言えば、いつだったか、将来はジャーナリストになりたいと漏らしていました。
リナならきっと、優秀なジャーナリストになると思います。

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