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ここはPCゲーム『ザ・シムズ2』の 物語風プレイ日記を公開しているサイトです
05 / 19 Sun 08:34 ×
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11 / 18 Sat 04:24 #御風 ×

大人は汚い。使い古されたような言い方だが、事実だと思う。
だけど結局、世界の歯車を回しているのは大人で、あたしらのような力のない
ガキは、その歯車に乗って運ばれていくしかないんだ。
仕方ない。あたしは、まだ一人じゃ生きられない。

無力ってことは、多分、それだけで一つの罪なんだろう。

「よう、ノーマ。一週間ぶりだな?」
「ああ…」
『ピンキーバードケージ』のバーテンダー、オーランドが話しかけてきた。その
ニヤケ顔を見た瞬間、ふと、両肩に疲れが重くのしかかるのを感じた。

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「今日は、どうする?バイトしていくか?」
「…」
あたしが黙っていると、オーランドは肩をすくめた。
「ま、無理にとは言わねーけどさ」
そして、サービス、と言ってカクテルの入ったグラスを一つ、寄越してきた。

思わず、ため息をつく。
何故、この店に来てしまったんだろう。

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『ピンキーバードケージ』は、いかがわしい店名からも察せられるように、女
たちが有料で様々なサービスを提供する店だ。表向きはビリヤードとバー、
そしておおっぴらにではないが、別室で合法的なストリップショーを売り物にして
いる、いわゆる大人の遊び場だ。
だが、ここでは密かに違法なサービスも提供されている。
各種の怪しげなクスリの販売、そして――――少女売春だ。

一ヶ月ほど前、レナードに連れられて、バービーらと一緒にここのプールバー
に遊びに来た。店内をふらふらしているうちに、あたしだけ、たまたま一人はぐれ
てしまった。
その時、あのオーランドの野郎に声をかけられたのだ。

「若い子向けに、いいバイトがあるんだけど、やってみる気ない?」

反射的に中指を立てたあたしを物ともせず、オーランドは「ここだけの話、すっごい
お金になるよ」
と囁いた。

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チン、とグラスを爪ではじいた。
「オーランド」
「あいよ、シゴトまわす?」
「…」
軽くうなずくと、オーランドはにやーっと笑って、親指を上にびしっと立てて
見せた。

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自分でも、心の片隅で「何やってんだ」とは思っているんだ。
けど、一方で、この行為を肯定したい思いが抑えきれない。
オーランドの示した金額はあたしの予想を越えていた。あたしは金が欲し
かった。一人で生きられるだけの金が。

あたしはこれまで十数年生きてきて、理解した事実が一つある。
それは、金はイコール『力』だってことだ。

あたしは、自分の無力さが憎い。だから力を得るためと思えば、自分の体を与
えるくらい、どうってことはない。
労働の対価に、報酬をもらうだけだ。
他のビジネスと何の違いがあるっていうんだ。

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けど、勿論このことは、レナードたちには秘密だ。あたし自身のプライドもあるし、
レナードの体面もある(この店はレナードの親父の店なのだから)
…それに何より、あいつらに余計な心配をさせるのが嫌だ。
たとえ、あたし自身が納得していても、外野も同様とは限らないだろう。


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バイトの後で、客の男に
「今度、一緒に飯でも食わないか?」
と誘われた。

「へえ、あたしに、興味あるんだ?」
「ああ、お前、なかなかいい女だよ」
どうせアンタも、十代ってブランドにひかれてんだろ…そう思ったが、口には出さ
なかった。こいつも客である以上、大事な金づるだ。
「プライベートはなし。また会いたいなら、あのバーテンを通しな」
そう言って、さっと脇を抜けて、歩み去った。

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店の前の駐車場に降り立つと、店はまだ明かりが煌々と灯っていた。

「…ちっ」

思わず、舌打ちをした。
露出した腕に、夜風が少し肌寒かった。
このまま、さっさとベッドに倒れこんで
しまいたい。
どうか、母さんに会わずに済みますように。
両肩を抱き寄せるようにして、あたしは、店の二階にある家へと向かった。


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