ガイにやり込められた後、俺はなかなか腹の虫がおさまらず、日が暮れて薄暗く
なった庭で、ぐるぐると一人彷徨を続けていた。
何が気に食わないって、デヴィッドの馬鹿がなぜかガイと仲が良いらしいことだ。
やけにガイをかばうかと思ったら、ガイまでデヴィッドなら乾杯に応じるとか言い
出す始末。
なにか?お前らホモか?女房持ちのくせして、そもそもたかがデヴィッドのくせして、
害虫なんかと仲良しこよしか!
まったく、虫唾が走るわ!
母も兄もガイにべったり。
これじゃ、まるで…まるで、この俺だけが仲間はずれのようじゃないか!
馬鹿な…いつの間に、俺は家族までもあの男に奪われていたというのか…
…
…なんか、焦げ臭くないか?
まさか、あれは…
燃えるゴミ袋…放火だ!!!!
ひいいいいっ
最近の俺は、火難つづきじゃないか?お払いでもしてもらおうか…って
そんなのん気なことを言っている場合じゃない!
い、一体どうしたらいいんだ!
ゴミ袋は燃えやすく、みるみる炎は勢いを増していく。あたり一面に胸の悪くなる
ような、物の焦げる匂いが充満していく。
お…俺が殺人なんて計画したから、罰が下ったんだろうか…
「誰か、誰かきてくれえええええーーーっ!!!!」
俺はパニックになり、ただ、叫ぶことしかできない。
「も、燃えるぅ、俺の屋敷が燃えてしまうぅ!!」
ばちこーんッ
いきなり、肩に衝撃をくらった。
「馬鹿か、何やってんだ、早く消火器を取って来い!!」
「が、ガイ?」
「窓から火が見えた、いまベルが消防署に通報してる、すぐに来るはずだ」
「しょ、消防署…」
「また、この家~??火の用心しろっつの、ったくよーっ!!!」
…
…
火は消し止められた。
俺の屋敷は守られたのだ。
図らずも、俺が焼き殺そうとしたガイの発見によって…俺の財産はあやうい
ところで守られたのだった。
「・・・・ど畜生!」
どうやら、俺の殺人計画は失敗に終わったらしい。少なくとも、火事でガイ
を殺すのは当分あきらめざるを得ないだろう…すでに二度も小火を出して
いる。三度目の火事が起きれば、いくら間抜けな司法と消防署でも、なに
か不審さを感じるに違いない。
なんという、皮肉な結末!
だが俺は、あきらめない。あの男を視界から追い出すまで、俺に安息の日は
訪れない。だがまあ、次は火事以外の方法を考えるとしよう…とにかく、もう
火はこりごりだ。
それにしても、近頃、ブライトリバーで放火魔が出没しているとはニュースで聞
いていたが、まさか西区の自分の屋敷までもターゲットになるとは…。
もう少しで大火事になるところだったのだ。
無能な警察どもめ、放火魔なぞ、とっとと捕まえろと言うのだ。
そして、極刑に処すがいい…俺様の屋敷を燃やそうとした当然の報いだ!
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