今日は――――俺の弟、レックス・ブラックの誕生日だ。
レックスは今日、幼児に成長する。
屋敷には弟の成長を祝うために、続々と関係者たちが集まってきている。
白髪が特徴的な博徒のリッキーと、赤毛で肌が浅黒いブランドンは、以前
にも紹介した。
彼らはそれぞれ、多数の部下を抱える組織のトップでもある。
だが、この二人のシノギは、てんで別々だ。
リッキーの抱える店は、主に賭博場。一方のブランドンは飲食および風俗
店の経営と、管轄ははっきりと分けられている。利益が食い合いになるの
を避けるためだ。
だから、直接の利害関係はないはずなのに、会えば互いに嫌味の応酬に
なるのはどうしてなのか…どうもその理由は、二人の性格にあるようだ。
「また二日酔いで遅刻かと思ったぜ、ブランドン」
鼻で笑いながら、リッキーが挑発する。
「ちっ…何度も同じ嫌味言ってんじゃねえよ、くそジジイ」
応じながら、ブランドンはこめかみの辺りを引きつらせている。どうにも剣呑
な雰囲気だ。
何でもスカイラーから聞いた話によると、先日行われたファミリーの会合に、
ブランドンは二日酔いが原因で遅刻をしたらしい。
「わーるい悪い、昨晩ちっと飲みすぎてな」
「…今度、会合に遅れたら、沈めんぞコノヤロー?」(にっこり)
…
細かい性格のリッキーは、待ち合わせに相手が遅れるのが死ぬほど嫌い
なのだ。もし遅刻をしたのが部下だったなら、おそらくそんな脅し文句じゃす
まなかったろう。さっくり半殺しになっていたはずだ。
だが生憎、ブランドンはリッキーと同列の幹部。せいぜい、嫌味を言うくらい
しか出来ないのが、また腹立たしいというわけだ。
ブランドンは、リッキーとは対照的な、よく言えばおおらかというか、物事に大
雑把な男だ。多分、なぜリッキーが彼の挙動にイライラするのかが、そもそも
根本的に理解が出来ていないんだろう。
やれやれ…この二人の仲が、いずれ変な形で爆発しなきゃいいんだけどな。
この男は、ギブス。リッキー達よりは格下の男だが、こいつもファミリーの
幹部だ。表向きはカーディーラーだが、その実態は盗品を売りさばく闇ブ
ローカー。…俺はどうも、この男が気に入らない。
顔も嫌いだが、人に媚びた(それでいて傲慢な)喋り方も、息がくさいのも
とにかく色んな部分がむかつく。
あと、この服のセンスはひどすぎると思う。
こいつは、ギブスの弟、ギル。
ギブスよりは、まだ人好きのする男だが、こいつは悲しいことに、致命的に頭が
悪い。どうやら、いっぺんに複数の事を考えられないたちらしい。
兄貴には絶対的に服従していて、腕力が強いせいか、バカにされながらも、
それなりに重宝がられているようだ。
こいつは…何というべきなのか、ちょっと悩むな。
まあ、いわゆるブランドンの情婦(イロ)だ。名前はルビー。
見ての通り、ブロンドの美人だが、情婦と言っていいものか…情夫というべき
なんじゃないかと、迷ってしまう。
…
…そう、こいつアレだ、オカマなんだ。
ブランドンは、あっちがなかなか旺盛な方らしい。
そして、その相手は女でも男でも、とりあえず好みのタイプなら構わないんだ
そうだ。だからルビーの女装は、本人の希望によるもので、ブランドンとしては
別にどっちでもいいらしい。
((ホモめ…))←心の声
ブランドン以外は、みな異性愛者だ。もっとも、リッキーは独身だが。彼は商
売女としか寝ない主義らしい。
GO TO HELL.!!
引きつった笑顔で、カップルに駄目出しをするこの女は、リタ。
もっとも、リタは別にホモ嫌いってわけじゃない。単純に、ブランドンが気に
食わないだけだ。
何でって、こいつはルビーの前にブランドンの情婦やってたからだ。
目の前でいちゃつかれりゃ、そりゃ怒るわな…。
しかも、当のブランドンは涼しい風。この男の神経の太さは、なかなかたい
したものだと思う。
そして最後。
これが俺の母、ユージェニー・ブラックだ。二人の子持ちとは思えない、美貌
の持ち主。性格は、どちらかと言えば控えめな方だが、親父の選んだ女らし
く、こうと決めたら譲らない気の強さも持ち合わせている。
さあ、面子もそろったことだし、これから楽しいパーティの始まりだ…。
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