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ここはPCゲーム『ザ・シムズ2』の 物語風プレイ日記を公開しているサイトです
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01 / 07 Sun 15:32 #御風 ×

「ジェシカ、今でも家でピアノを弾いてる?」

放課後の音楽教室で、音楽教師のミーナ先生に聞かれた。
「え、はい、時々は…」
「あなたのピアノ、とても素敵よ。腕が落ちないよう、練習していてね」
「ありがとうございます」
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そう言えば、以前ミーナ先生から“ジェシカはピアニストになりたいの?”と
聞かれたことがあったっけ。
ミーナ先生は大学で、芸術学を学んだ人で、とてもピアノが上手なのだ。
私は、授業が終わった後で
、こうして先生が気まぐれに聞かせてくれる演奏
が大好きだった。

先生は帰りがけに、“将来の進路について聞きたいことがあったら、遠慮
せずに相談してね”と言ってくれた。
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進路…

少し、驚いた。今日ミーナ先生に言われるまで、自分の将来のことなんて、
何も考えていなかった。
一年後も、十年後も、今と同じような日々が、ただ漫然と続いていくような気
がしていた。そんなはず、ないのに。



でも、私…何がしたいんだろう?

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ピアノを習い始めたのは、5歳の時。それは、今でも大切な趣味として続い
ている。寂しい時も、嫌なことがあった時も、ピアノを弾いていれば忘れられ
た。お父さんたちも、私のピアノを喜んでくれたし…。
でも、分っている。趣味で弾くことと、プロになって沢山の人の前で弾くことは、
全然ちがうものだ。

わたしは、こうして好きなように弾いていれば、それで幸せ…。

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カチャ…

ドアの開く音に、演奏に夢中だった私は、まるで気がつかなかった。

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だから、背後でいきなり男の子の声がした時、口から心臓が飛び出そうな
くらい驚いた。

「すげーな、ピアノ!」
「きゃっ!?」

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「あ、悪りぃ。驚いた?曲が終わるまで、黙って待ってたんだけど」

同級生の、アイザックだった。私は突然の状況に対応しきれず、パニックに
陥りながらイスから飛び降りた。
今までの演奏…このひとに、聞かれていたってこと?
いやだ、恥かしい…!

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「すごいな、ジェシカ。ピアノめちゃくちゃ上手いじゃん!」
「…」
言葉が出てこない。どうしよう、こういう時は何て言えばいいの?
「俺、音楽は全然駄目なんだ。っていうか、そもそも楽器自体あんま触ったこと
ないしさ。だから、クラシックとか
よく分らないんだけど」

アイザックは目をきらきらさせながら
「今のピアノは、すげー良かった。なんか、感動した!」
そう、言った…。

「あ、ありがとう…」
私のピアノを、こんな風に家族や先生以外の人から褒められたのは、これが
初めてだった。

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「プロのピアニストになんないの?すっげ、儲かりそう」
「…」

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「お金…欲しいから、弾いてるんじゃ、ないもの」

ああ、良かった。ちゃんと、声が出た。
私の言葉に、アイザックはびっくりしたようだった。

「えーでも、もったいねー!俺があんな風に弾けたら、絶対プロのピアニスト
になって、コンクールで賞金とかガスガス獲って、CD出しまくって、世界に
巡業公演しまくって、めちゃくちゃ稼ぐのに」

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…ふふっ

思わず、笑ってしまった。
「え、なに?何かおかしかった?」
「だって…すごく、簡単そうに言うから…」
プロには、プロの人にしか分らない苦労が、沢山あるはず。
それに、本当に音楽が好きなら、お金のためだけにピアノを弾くわけない。

でも不思議と、お金儲けについて語るアイザックは、見ていて嫌な気持ち
にならなかった。

アイザックって不思議な子だ。いつも、お金の話をしてる。

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いつだったか、水槽を見ていたら、意味もなく話しかけられたことがある。
「こないだ、ペットショップに行ったらさー」
「…」
「魚って意外と高いのな!こんなちっちゃな魚が俺のバイトの時給より高い
んだぜ、びびったよマジで」
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「あと魚の値段って、大きさじゃないんだよなー変なの」

なんて話しかけられて。
変な子…とその時は、思ったけど。

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面白い。アイザックを見ていると、自分とはまるで違う生き物みたい。
彼がタフな海水魚なら、私は淡水魚。

…小さな水槽に満足している、ちっちゃな熱帯魚だと、そう思った。



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