うわーうわー。
学校帰りに寄った本屋で、うっかり立ち読みし過ぎちゃった!
気がつけば、もうこんな時間。何で本屋に寄ると、こんなに時間が経つのが
早いんだろう。きっと、家じゃ夕飯の支度してるだろうな。
はー…それにしても、きれいな夕焼けだ。
こんなに赤く染まった空、久しぶりに見たかも。
最近、ここフロータウンでは、治安の悪化が深刻化しているそうだ。
けど、こうして茜色の光に包まれた街を見ていると、過剰報道なんじゃ?
なんて、うっかり思いたくなってしまう。
もちろん、そんなはずないと分っていても…
路地の向こうから聞こえてくる、子供達の笑い声。
夕餉の匂い。
好きなんだよね、夕方の街って。
へえ、ここは食堂か。鼻をひくつかせると、食欲をそそる匂いが漂ってくる。
小さいけど、意外と地元の隠れた名店かもね。
ああ、お腹がぐる~っと鳴ってしまった。
ん?ウィンドウの向こうに見えるのは、あれってアイザック・ウェルズ?
そっか、ここでバイトしてるんだ…。
確か以前、ボウリング場の清掃と、どこかのバーの清掃をかけもちしてるっ
て聞いたけど、今はウェイターもやってるんだ。
頑張るなあ。
あたしも大学のこと、そろそろ具体的に考えなくちゃ。
…
アパートに戻ると、妹のマリーがドアの前で泣きべそをかいていた。
「マリー、どうしたの!?」
あたしは驚いて、思わず大声を出してしまった。
「お、お姉ちゃん…ママが…」
「母さんが?」
あ、もしかして…
…やっぱり!
やっぱり、母さんの陣痛が始まってる。どうしよう。そうだ、父さん!
「わああ、ま、ま、ま、マリサぁ~ッ!!どうしよう!どうしよう~!?」
駄目だ、役に立たない!っていうか、子供が生まれるのは、これで四人目
でしょうが、もっと場慣れしててよー!!
マリーとロザリーが生まれたとき、私はまだ子供だったけど、少しは覚えて
る。そう確か、呼吸を整えるんだ。
大丈夫、母さんはベテランだもの。きっと無事に赤ちゃんを産んでくれるはず!
「母さん、ひっひっふーでしょ?」
「そ、そうだったわね、呼吸を…ひっひっふー…っ」
ひっひっふーっ
ひっひっふーッ!
どさっ
「腰が抜けた…」
駄目だ、この親父。
…
そして…
無事、誕生しました!
ポーター家の四番目の子供!そして、四番目の娘(笑)
「・・・・・・」
父さん、残念でした~♪お星様への祈りは、どうやら遠すぎて届かなかった
みたいね、あははは。
ちなみに管理人はリロードはしてませんって、あたし一体何言ってるのかな。
赤ちゃんが生まれて、ちょっとハイになってしまったみたいだ。
名前は、シェリーに決定。
あーもー可愛いー!
あんまり可愛くて、食べちゃいたいくらい。
「きゃは」
く…っ!きさま、本当に食べるぞ!そんな可愛く笑ったら駄目!危険!
「いもうとー!!」
「やったーいもうとー!!」
「ママすごいっ」
「すごいねーっ」
マリーとロザリーも大喜びだ。
なんか、あたしも気が抜けて、思わずソファにへたりこんでしまった。
すごいな、一日の終わりにこんなビッグイベントが…。
良かった、あの新刊を途中で切り上げて帰ってきて。すごく名残惜し
かったんだけど。
はー。すごい。人間ってすごい。感動したよ!
でも…冷静に考えてみると、実はけっこう大変なんだよね。
ただでさえ、スペースの足りない我が家が、ついに6人家族の大台
にのってしまったわけですよ。
どうするの、父さん?
「・・・・・・」
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