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ここはPCゲーム『ザ・シムズ2』の 物語風プレイ日記を公開しているサイトです
05 / 19 Sun 08:34 ×
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01 / 15 Mon 01:08 #御風 ×

ガタッツ

「ああっくそ!駄目だ。てんで勝てやしない!」
「くく…悪いな、今晩は大分儲けさせてもらったぜ」
「絶対、いい手だと思ったのに…」
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俺がリッキーの経営する賭場の一つ、フールフォールズクラブに到着すると、
リッキーの客がちょうどカードテーブルの席から立つところだった。
相変わらず、リッキーは博徒としては凄腕らしい。
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「大勝ちしたみたいじゃないか、客相手に、いいのか?」
背後の俺には気がついていたらしい。驚きもせず、にやっと笑いながら顔を
向けてきた。
「ああ、さっきの若造ですか?あれは、ギャンブル中毒でね。何度カモられ
ても、懲りずに通ってきやがるんですよ…ま、こっちもたまに良い思いをさせ
てやるからね」
そう、うそぶいて、リッキーは乾いた笑い声を立てた。
「ランドグラーブは?」
「まだですよ」

今夜、俺はこの店で、実業家のマルコム・ランドグラーブと密かに会う手は
ずになっていた。
まだ来ていないなら、先にリッキーに例の話をしておくか。

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「リッキー」
「なんです?」

――――突然だが、レナードの教育係りを、お前とブランドンに頼みたい。

俺の言葉に、リッキーは顔色一つ変えなかった。もともと無表情な男だ。
しかし、つまらなそうな口調で、言った。
「ブランドンも関わるんですかい」
「あいつにも、得意分野はあるだろう」
「意地汚ねえ雑食ですぜ。レナードが、男の味でも覚えちまったらどうし
ます?」
俺は肩をすくめた。
「あいつがファミリーの一員として使い物になるなら、プライベートで男を
抱こうがラマを抱こうが、かまやしないさ」
「言うねえ」
リッキーは、眉をひそめながらも、うっすらと笑った。
どうやら、この件については、了承してくれたらしい。



やがて、マルコム・ランドグラーブが現れた。
彼は入店すると、目の前に立つ俺の存在には目もくれず、そのまま無言で
店の奥の社交室へと消えていった。
無論、予定通りだ。
俺と彼は、今日ここで『偶然』出会うことになっているのだから。

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フールフォールズクラブは、かつて女人禁制の紳士向け社交クラブだった。
さすがに現在では、入店時に性別を問うことはないものの、一般の人間が
気軽に入るという雰囲気の店ではない。
ここは、俺があまり他人に知られたくない人物と遇う際に、重宝している場
所だった。

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「ミスター・ランドグラーブ、こんな場所でお会いできるとは、光栄です」
「これはミスター・ブラック、奇遇ですな」
「かけても?」
「ああ、どうぞ」
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「どうです、事業の調子は」
「原油価格高騰の長期化が響いているね、君の方は?」
「人件費をいかに抑えるかで頭を抱えていますね。正直、わが国のスキルに
よる資格バッジ制度は厄介ですよ、職種を変えても賃金のレベルが変わら
ないとはね」
「同感だな」


「時にミスター、最近の市政をどう思われます」
「…」
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「君は私を誰だと思う?」
不意にマルコムの口調が、変わった。
OK、ようやく本題に移れるというわけだ。

「マルコム・ランドグラーブ、ラマ友民党の大物議員。違いますか」
「その通り。ところで現在の市長である、ハワード・レイトンは?」
「自由ミルヒー党」
「そう、つまり私は現在、与党ではない。残念ながらね。そんな私の意見
なぞ聞いて、何になる?」

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ハワード・レイトンは、パーシー・ライト亡き後、パーシーの後継者と銘打って
市長選挙に臨み、見事に当選した人物だ。
パーシー以来、ブライトリバーの行政は、明らかに自由ミルヒー党の勢力
の方が強くなっている。
かつてランドグラーブがブライトリバーを支配していた頃には、想像だにしな
かった事態だろう。

「しかし、そろそろ次の市長選挙が近づいてきているじゃありませんか」
「…」
「ランドグラーブが、再び政権を奪い返す、チャンスでは?」
マルコムは、眉をひそめた。

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「私の祖父が事業に失敗したことで、我がランドグラーブ家の立場は、一
介の富豪にまで落ちてしまった。現在、私が及ぼせる影響力はさほど大き
くない」
「それは、ご謙遜でしょう。ランドグラーブはあなたによって、立ち直った」
「ふん」
マルコムは胡散臭そうに、鼻を鳴らした。
「君はパーシー・ライトと交流があったそうだが、ミルヒー党のリベラルな政
策を支持しているわけじゃないのかね?」
俺は薄く笑った。

「…私が信奉するポリシーは、ただ一つ、金ですよ」

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そう、政策なんて俺には関係ない。俺が望むのは、ただ行政と太いパイプライ
ンを作ること。前市長のパーシー・ライトは、その点、話がわかる人物だった。
しかし、現市長のハワードはパーシーの後継者を自称するわりには、融通が
利かない。俺としては、今の時期に彼に再選されては、困るのだ。

「私個人の気持を言わせてもらうなら…ブラック家は、ラマ党を応援したいと
考えていますよ」
「…」

しばらく、沈黙があった。

「それに対する、君への見返りは?」
「なに、たいした事じゃありません」
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「警察?」
「そう、グリーマン署長をご存知ですね。そろそろ定年が近づいている。
私は彼とは幾らか面識がありましてね」
「彼はラマ党だったな」
「そうです。パーシーが市長となる以前から、彼は警察署長でしたからね。
しかし彼が現在の地位にいる時間は、あとわずかだ」
「なるほどね、そういうことか」

そういうことだ。
ファミリーの息のかかった人物を、次の警察署長へとすえるために、俺はラ
ンドグラーブに近づいたのだ。

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「あなたの妹さんである、エレーヌ・ランドグラーブ嬢は、近頃ケン・パーカー
議員とご婚約されたとか…」
「彼を立候補させろと?」
「もともと、あなたにもそのつもりがあったのでは?」
「…まあな、彼は野心の強い男だ。いずれとは考えていた…」

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結局、マルコム・ランドグラーブは、俺の申し出を断らなかった。予想内の事
だ。彼はランドグラーブ家がブライトリバーを支配していた歴史に、強い憧れ
と執着を持っている人物だ。

さて…。
市長選挙が本格的に開始するまで、まだしばらくの間がある。
ハワードや、他に立候補しそうな人物の身辺でも、探ってみるとしようか。
何か、弱みを握れるかもしれないからな…。

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