人生って、上手くいかない。
ガキの頃から、いつもそう思ってた。
いつになったら、あたしは自分の生き方をこの手につかめる?
いつになったら、心から満足することが出来るんだろう。
…
「ランゲラク!」
今日もまた、ラムゼイの怒鳴り声が教務員室にひびく。
あーうるさい、うるさい。昼から学校に来たくらいで、そうギャーギャー騒ぐなよ。
来ただけマシだろうが。
むしろ褒めろ。あたしを褒めろ、このクソ眉毛。
「お前は、学校を何だと思ってるんだ!?何で朝起きて、学校に来る、それ
くらいの事が出来ない?」
出来ないんじゃなくて、しねーんだよ。バカ。
「いいか、俺はお前のために言ってるんだ!」
へー。知らなかった。
「お前のようなクズはな、何年たとうが、社会に出ようが、結局クズのままだ!
周囲に迷惑ばかりかけて、一生人として真っ当にしつけられないまま、社会の
ゴミとして死んでいくんだ。お前は、それでもいいのか?」
うざい。死ぬほど、うざいよコイツ。
なに、人の一生を簡単に語ってんの。
「あんたさあ、本当はあたしが死のうが生きようが、どうでもいいんじゃん?」
「何だと?」
「大事なのは自分だろ?あたしの一生に、責任取る気なんてない。ただ面倒
ごとを起こされるのが、嫌なだけだ」
「お、お前…」
ラムゼイの顔が、赤を通り越して白くなった。
「あたしのためにとか、うぜーんだよ。そういう言葉で、一体だれ騙してんだ
よ、あたしか?それとも、自分か?責任取る度胸もないくせに、上から見下げ
て説教してんじゃねーよ!このクソ偽善者!」
…
あたしは、ラムゼイを残したまま、さっさと教務員室から出た。
もう、このまま帰っちまおうかな…
…
いや、やっぱりレナードの顔、見てからにしよう。
アイツは確か、今日は学校に来ていたはずだ。
お、バービー発見。
声をかけようと思ったが、お楽しみ中のようなので止めといた。
ふうん…あいつら、仲良くやってんじゃん。
うらやましい。
教室に入ると、思ったとおり、レナードはそこにいた。
…あたしは、なるべく、さりげなくレナードの隣りの席に着いた。
あの、カラオケでキスした日以来、顔を合わせるのは初めてだった。
レナードはあの後、何事もなかったかのように、トイレから戻ってきたバービー
を迎え、あたしたちは、いつものように深夜に解散した。
…
あーどうしよう。
すげー…気まずい。横が向けねー。何コレ。
やべーなあ、あたし…今めちゃめちゃ、びびってる。
さっき、ラムゼイに説教くらってる時は、全然緊張なんかしなかったのに。
もし話しかけたら、レナードは、どんな反応をするだろう。
ついつい、キスなんてしちまったけど、今までのあたしとレナードの仲から
考えて、こいつがあたしに気があるとは思えない。
でも、あたしは…レナードが好きなんだよな。
…駄目だ、沈黙に耐え切れない。
「こないださー、ごめんな、いきなり…」
「…ああ」
レナードの表情が固い。あたしは、誰かに心臓をぎゅっと強く絞られたような
気分になった。
駄目だ。これは、おそらく望みなし。
レナードにとっては、迷惑だったんだ、あのキスは。
「なんつーの?バービーにあてられちゃったみたいでさ」
舌が、思ってもいない事を、ぺらぺらと喋る。
「やっぱさ、あたしも、そろそろ男の一人や二人欲しい年頃じゃん?」
「…」
「だ、誰でも良かったわけよ。たまたま、あそこにいたのが、お前だったって
言うか」
「お前さ、そんなんで、男にキスしようって言うわけ」
「…」
「やばくねーか、その考え」
「…」
「悪かったよ、変なことして」
「別に気にしてねーよ、キスくらい。でも、同じノリであんまり男に簡単について
いくなよ?最近変なヤツ、多いらしいぜ」
「わかってるよ、そんな事、お前に言われなくたって…」
…
…
…
「ちっくしょー!!!!」
ドッガシャーン!!!
この世のすべてが憎いぜ、ちくしょう!!!
馬鹿か、あたしは!
脳細胞がとろけて流れちまったのか、ノーマ・ランゲラク!
くそー恋って、むかつくぜ!
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