朗報です。『フィーべ』の新しい従業員が、決まりました!
お祖母ちゃんの友達の娘さんである、フィリパ・アンダーソンさんです。
澄んだ茶色の目が、優しそうな印象の女性です。
まだ、どんな人かよく分りませんが、私の第一印象としては、合格!という
感じ…。少なくとも、これまで面接に来た人の中では、一番身近な雰囲気
がしました。
お祖母ちゃんも、昔に数度会ったきりで、あまりよく知らないそうですが、
「ジルとゲーリーの娘だもの、きっと大丈夫よ」
と、楽観的な意見でした。
「おばさま、これから、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくね。あなたには、娘のローリンに代わって、レジ係を勤
めて頂きたいの」
「私、これまでレジは扱ったことないんですけど…」
「大丈夫よ、ちゃんと教えるし、それにコツさえ飲み込めば、そんなに難しい
作業じゃないの」
ママがフォローするように、声をかけました。
それでも、フィリパさんは何だか不安そう。
一通り、レジのやり方をフィリパさんに教えた後、ママは家に帰っていきま
した。
「ごめんなさいね。お店にいると、賃金が発生しちゃうものだから…」
そういうものなんですか?
さて。
いざ仕事が始まると、慣れないフィリパさんは、とても大変そうでした。
何しろ、ママとはレジを打つ早さが全然違うんです。手順はママに教えられ
ても、スキルの習熟度はフィリパさん自身が上げていくしかありません。
「会計、まだ?」
いらいらしたように、これ見よがしに腕時計を見るお客さん。
「すみませーん、まだ不慣れで…」
頑張れ、フィリパさん。
もちろん、私もセールスを頑張ります。忙しいから、人手の足りないところは
各自が補わないと回らないのです。
「どうですか~このノーム。可愛いですよね」
「うーん、確かにそう言われてみると、何だかむらむらと懐に入れたくなって
くるような…」
あれ、同級生のキッドが店に来ていました。
「いらっしゃいませ~」
「ん?なんだ、お前はジャクソンじゃないか」
「ここ、私のお祖母ちゃんのお店よ。ここで、アルバイトしているの」
「そうか、額に汗して働いているわけか。貧乏人は大変だな」
「…」
やっぱり、嫌なやつ…。
「あ、エリザベス」
今日は、同級生がよくお店に来る日だな~なんて思いながら、後ろを振り
返ったら…
キッドは、もういませんでした。
何も買わずに、店から慌てて出て行ってしまったみたい。何か用事でも思い
出したんでしょうか?
それにしても、人を貧乏人だなんて。
確かに、私のうちはパパは研究職で別に実業家とかじゃないし、ママもパー
トで家計を支えているような、ごく普通の家だけど、みんな仲良しで楽しい
自慢の家庭です。
もう、キッドって、本当に嫌な性格。
あんな人、バービーにとっちめられちゃえばいいんですよ。ホントに。
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